第12章 冬毛
「……! 本当ですね。とても触り心地がいいです」
「でしょ。何の動物なんだろうね」
密な毛を控えめに撫でるソーニャの手をマフで包む。
「まるでソリ犬の毛を何倍も集めたような……こんなに毛の密集した動物、見当もつきません」
「後でスヴェトザール様に訊いてみるね」
そんな約束をし、夕食後のお茶の時間。サプフィールはスヴェトザールに毛皮についての話を切り出した。
「今日、使用人から贈り物のマフを受け取りました。いつもありがとうございます」
「どういたしまして。使っていただけたら嬉しいです」
紅茶を飲みつつ、スヴェトザールが少し目を細める。
「とても触り心地の良い毛でしたが……あれって何の動物の毛皮なんですか?」
「名前は、何だったか……寒い海に生息しているイタチのような生き物だと聞きました。北方の交易品として人気のようです」
「海の生き物なんですか。いつか生きてる姿も見てみたいですね」
シルクのような滑らかさの毛を思い出しながら言うと、スヴェトザールが小さく笑う。
「本当に動物が好きなんですね」
「え……はい、まあ」
本当に、という言い回しにサプフィールが固まる。
今までスヴェトザールとは動物に関する話などしたことがなかったはずだ。
「……好きではありませんでしたか?」
「い、いえ。好きです……ただ、どうして知ってるのかなって……」
少し不安げな顔をしたスヴェトザールに、サプフィールが遠慮がちに訊く。
「よく番犬を撫でたり猫を触ろうとしているのを見ますし……それに去年私が贈った外套も、よく毛を撫でていましたよね。だから、被毛が好きなのだと思って」
スヴェトザールは何ということもない口調で答えた。
たしかにコーカシアン・シェパードのシャリクやネズミ捕りの猫たちはかなりの頻度で接触を試みているから、目撃する確率が高いのはまだ分かる。
しかし去年の外套の毛皮はロングケープの裏に打たれているものだった。外套の内側でゴソゴソしているところまで見られていたなんて。
サプフィールは冬の夜だというのに、額が汗ばむのを感じた。