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愛しのサプフィール

第10章 庭園


「それにしても、花の蜜を吸って凌ぐほどに甘いものが足りませんでしたか。菓子類に使う砂糖や蜂蜜をもっと増やすよう厨房に言っておきますね」
「いえ、お菓子は十分おいしくいただいています。花の蜜を吸うのは、なんというか……ただの趣味なんです」
自分で言っていて恥ずかしい。サプフィールは自分の悪癖を夫に打ち明けることに戸惑いつつも、誤解を生まないようにと正直に白状する。
「趣味……ですか」
「……」
しばしの沈黙が流れる。
サプフィールはまた食事の手を止めた。
庭の草花を口に含むことを両親は許してくれていたが、スヴェトザールには奇行扱いされるかもしれない。
「蜜が吸える種類の花はもっとあるはずです。色々と取り寄せてみましょう」
庭の方へ目を向けながらスヴェトザールが言う。
「え、いいんですかっ……いや、じゃなくて、そんな事したらせっかく整えてらっしゃる今の庭園が台無しになってしまいます」
「別に何もかもを植え替えるわけではありません。一角を使うだけです」
「そっ、それでも……うう、バナンチクとゼニアオイをお願いします……!」
誘惑に負け、サプフィールは実家にもあった花を二つ挙げる。その答えを聞いて、スヴェトザールはどこか満足げに頷いた。





「結局バレちゃった」
夜、湯浴み後に髪を梳いてもらいながらサプフィールが言う。
「でも怒られなかったよ。あと、庭に食べられるやつ増やしてくれるって」
「それは良かったです」
そもそも叱られることはないと確信してはいたものの、好みの植物を植えてもらえることを報告するサプフィールの笑顔にソーニャも嬉しげに微笑む。
「へへ……楽しみ。でも早くても5月頃からしか咲かないから、半年以上先なんだ」
「春の楽しみが増えましたね」
「たしかに。しばらくは温室と仲良くするしかないね」
暖炉の火で暖まった部屋の中、サプフィールはうとうとしながら返す。
ソーニャは少ししっとりとしているうなじ付近の髪の毛を乾いた布で押さえつつ、丁寧に髪を梳かし終えた。
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