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愛しのサプフィール

第8章 夏至


そういえば、とスヴェトザールはふと思い出す。サプフィールとの婚姻で王都にある彼女の実家に行った時、コトフ子爵夫妻はかなり距離の近いやり取りをしていた。
物理的にも、精神的にも。
そのときは過激な夫妻だなと思ってしまったが、案外あれが仲の良い夫婦というものなのかもしれない。
「私は夫として未熟です。サプフィール……これからは遠慮せず、貴方にとっての夫婦が何なのかを私に教えてください。貴方のためならば、いくらでも応えましょう」
「それなら……まずは、そうやって何でも聴き取りと行動で解決しようとするのを控えてください。領主としては正しいんでしょうが、夫としてはイマイチです……」
言いながら、サプフィールが寄りかかったままの体勢でスヴェトザールの腕を抱きしめる。
「相手に求められるまま動くんじゃなく、自分がどうしたいかで……私を求めてください」
「私がどうしたいか……?」
「はい。ただ話しかけたいとか触りたいとか出掛けたいとか、つまらないことでいいんです。贈り物とか配慮じゃなく、単純な欲求での行いで」
自分の指の隙間にサプフィールの指が滑り込んできた。
スヴェトザールは動かずに、そのままサプフィールの好きにさせる。
「参考までに聞きますが、たとえば貴方は私にどうしたいですか?」
「……もっと私情で構いたい。用もなく会いに行きたいし、会いに来てほしい。どうでもいいことを報告し、どうでもいいことを訊いてほしい……そんな感じです」
サプフィールが列挙した言葉は、今までの数ヶ月間の中であまり見られないものばかりだった。
ちょっとしたコミュニケーションすら遠慮していたみたいだ。
「そんなことくらい、いつでも……」
「ずっとそうしたかったんですが、あなたはいつも忙しそうで、いつそうしていいのか分からないんです。だから、もしあなたから自分がしたいことを私にしてくれたら……私もタイミングを見計らいやすくなるはずです」
指と指の間をサプフィールの指が恋しげに撫でていく。小さくて細い手は、少し力を込めただけで潰れてしまいそうに思えた。
「…………」
スヴェトザールはおそるおそる指を曲げ、サプフィールの指の隙間を埋めるように握る。
そうすると、密着するようにそのまま握り返された。
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