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愛しのサプフィール

第8章 夏至


先ほどのサプフィールの言動を思い返すと、今までの自分の配慮が全て空回りしていたような気がしてくる。
「お前から見てどう思う?」
振り返りながら聞くと、ドミトリーは少し肩を竦めていた。
「ほほ。あくまでも私から見て、ですが……むしろかなり好かれているように思います」
ゆっくりと白いヒゲを撫でながら、ドミトリーがそう答える。
「………………」
むしろかなり好かれている?
スヴェトザールは結ぼうとしていたクラバットを取り落とした。
「お待ちください。ただいま拾います」
「……すまない」
クラバットを拾い上げたドミトリーが軽くホコリを払い、そのままスヴェトザールの襟元にクラバットを結ぶ。
「どうぞ今夜は奥様との夏至祭を楽しんできてくださいませ」
そう言って送り出されたスヴェトザールは、いつもより少しぼんやりした顔で妻の元へ向かった。





馬車に乗って再び領都に着く頃には日が傾き、辺りは少しずつ薄暗くなり始めていた。
草地には点々と配置された焚き火が薄暗闇を赤く照らしている。
離れたところには大きな篝火が燃え、その周囲には人々が集まって歌ったり踊ったりしているのが見えた。
そこへ近付こうとスヴェトザールが進むと、サプフィールはその背後に隠れるようについてきた。
「どうしました?」
「あの……まだ、目元に腫れが残ってて……」
あまり明るいところに出たくないらしい。
スヴェトザールはそこで足を止め、サプフィールの背にそっと手を添えた。
「あちらに座りましょうか」
火の灯りが薄っすらとだけ届く、人気のないベンチへ誘導する。
真っ白なハンカチを座面に広げ、そこにサプフィールを座らせる。スヴェトザールもその隣に腰掛けた。
少し遠くからは火の爆ぜる音と、楽しげに笑い合う声。それを静かに眺めているサプフィールの横顔を見つめる。
「……」
泣き腫らした後の瞼がまだ少し膨らんだままで、涙を拭いすぎて擦れたであろう頬にも赤みが差していた。
見ていると、サプフィールの手がそれを隠す。
「ごめんなさい。せっかくのお出かけなのに、こんな見た目で……」
「いえ、気に病まないでください。そもそも私が原因なんですから」
妻が謝ることなど何もない。泣いたことだって、泣いた後の顔だって何も問題はないのに。
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