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愛しのサプフィール

第8章 夏至


スヴェトザールは昨夜の食事中のやり取りを思い返す。
真っ赤な顔で焦りながら夏至祭について何か言おうとしていた妻の姿と、それを最後まで聞かずに願いを叶えてあげたつもりになっていた自分を。
「申し訳ありません。私は貴方のお誘いを無下にしてしまっていました」
ポケットからハンカチを取り出し、スヴェトザールはサプフィールの顔をそっと拭く。
「本当にごめんなさい。夫として情けないです」
「謝らないでください……何もかも、上手く伝えられなかった私の責任です。私は、自分が憎くて涙が止まらないんです」
すっかり腫れた目で、サプフィールは続ける。
「結局、今だってこんなことであなたを困らせて……仕事から帰ったばかりで疲れているのに……」
また涙が溢れ出してきた。スヴェトザールはそれを見て、サプフィールを抱き寄せる。
「疲れてなんかいません。貴方さえよければ、今からでも一緒に祭りに行かせてください」
言うと、サプフィールは少し驚いたような顔をして、それから頷いた。
「…………はい。ぜひ」
それからサプフィールの涙と目元の腫れが落ち着くまでの間、スヴェトザールは一旦自室へ着替えに戻った。
サプフィールと同じように出来るだけ簡素な服を従者に選んでもらい、髪も普段ほどきっちりとは整えずに後ろに流す。
「……ディーマ」
「はい」
着替えをしながら、近くに控えるドミトリーに話しかける。
「私のせいで妻を悲しませてしまった」
「左様ですか」
ドミトリーが短く応える。スヴェトザールは溜め息混じりに続けた。
「祭りに行きたいだけかと思っていたが、どうも私と行きたかったらしい。正直、困惑している」
「何故ですか?」
「妻は私といる時ずっと落ち着かなさそうにしているし、目を合わせてもすぐに逸らしてしまう」
サプフィールはいつもそうだった。自分と一緒に過ごしている間は、程度の差こそあれ常に緊張していた。
「それもあって、あまり好かれていないのだと思っていた。元々、用もないのに接触する必要はないと思っていたし、余計に近付かないようにしていたのだが……もしかして、最初から全部私の勘違いだったんだろうか」
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