第8章 夏至
「あ、あの……明日、夏至祭ですね。私……わっ私と、その……」
一緒に行きませんか。
サプフィールは舌をもつれさせながら、そう続けようとスヴェトザールに目を向ける。
すると、スヴェトザールはサプフィールの言いたいことを察したように頷いた。
「行ってきて構いませんよ。護衛を付けるので、ゆっくり楽しんできてください」
「えっ」
先回りで返された言葉にサプフィールが声を漏らす。それからおそるおそる続けた。
「ス……スヴェトザール様は……」
「明日は周辺の牧草地を見て回る予定です。早朝に出るので、今夜は共寝を控えましょう」
「あ……はい」
それきり会話はなかった。スヴェトザールが先に席を立った後、サプフィールも静かに自室へと戻っていった。
翌日の昼前、サプフィールはソーニャと共に箱馬車に乗って街へ出た。
領民の目を引きにくい比較的簡素なドレスを着ている。目の前に座るソーニャも、普段の侍女服ではなく簡素な外出着に着替えていた。
「晴れてよかったね」
「ええ、とてもいいお天気です」
「うん。本当に……」
窓の外を見ながら頷く。
馬車の前後にはスヴェトザールが言っていた通り、護衛が1人ずつ馬に乗って進んでいる。
騎馬護衛2人と御者、従僕、それにソーニャを伴い、一行は領都に着いた。
馬車を停め、騎馬の護衛たちも馬を預けると、サプフィールはソーニャと賑やかな方へ歩いていく。護衛の2人は、いくらか距離を置いて後ろからついてきていた。
草地に簡単な露店や長机が並び、色んな飲食物が売られている。
サプフィールは羊肉の串焼きを2人分買ってソーニャと一緒に食べながら行く。
「けっこう固いね」
「親畜の肉だとこういう歯ごたえがします」
「そうなんだ。たまにはいいね」
臭み消しのスパイスの香りが鼻を抜ける。口の中で何度も噛みしだきながら、周りの景色を眺めた。
子供たちが走り回り、大人は飲み食いし、楽器を持った人たちが演奏している。
短い夏を謳歌するように、皆好き好きに祭りを堪能していた。
串焼きを食べ終えた頃、サプフィールは川辺の方に若い娘が多くいることに気が付いた。皆、何かを作って川に流しているのが見える。