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愛しのサプフィール

第7章 癖


晩夏。馬での外回りから帰ったスヴェトザールは執務室に戻る。
襟元を緩め、着替えもせずに執務椅子に座った。
「……はぁ」
数日かけて領内各所の麦畑の収穫状況を確かめたり、穀倉や納屋を回ったり、道や橋に異常がないかを見に行ったりした。
秋が深まる前に水車や製粉所の点検も終えなければならないし、収穫の報告が悪かった村も直接見に行く必要がある。
冬作物のための畑の準備が進んでいるかどうかも心配だ。
人を送ることで済む場合もある。けれど自ら赴いて現場を見て判断しなければならないことも多く、どうしても外に出る機会が増えていた。
この時期はどうしても出ずっぱりだ。早朝から出て夕食の時間の前に帰るから、息子の様子を見る機会がかなり限られる。
「息子さんはコズロフ伯爵によくお似になりましたな」
「真っ黒の艶々の御髪に金色の目……大きくなったらますます端正な顔立ちになられるでしょうね」
「いつも物静かで落ち着き払っていて、まるで旦那様の生き写しのようです」
「勉強熱心で向上心もあるし、将来きっとスヴェトザールのような立派な領主になるだろうな」
最近は来客や使用人や家庭教師からこんな話ばかり聞く。
執務机に突っ伏しながら、机上の小さな肖像画を掴んで引き寄せた。
画家の前で緊張してぎこちない表情のサプフィールが描かれている。
「……貴方が傍にいれば、もっと私に似ずに育っていたんでしょうか」
つい、そんな言葉をぼやく。
妻は表情豊かで、思考が柔らかく、繊細で少し抜けていた。
そんな彼女が息子の成長を近くで見守っていたら、トレーネスは今よりもっと子供らしく振る舞えていたかもしれない。
「……」
執務室の外から足音が聞こえる。誰かがここへ向かってきているみたいだ。
ノックの音が聞こえるや否やスヴェトザールは身を起こし、肖像画を元の位置に戻した。
「お疲れ様です、旦那様。お召し替えの時間でございます」
「ああ」
従者のドミトリーと共に自分の寝室へ戻り、着替え、そしてダイニングルームへと向かう。
食卓にはすでにトレーネスが席に着いていた。
「待たせた」
「あ、いえ……お仕事お疲れ様です、お父様」
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