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愛しのサプフィール

第6章 遠出


拗ねたような口調が可愛いな、と思いながらサプフィールがポルーシャに振り返る。
「ポルーシャ嬢も、私と交友を持ってくださると嬉しいです」
「ぜひ! お姉様と私でいつでも歓迎しますわ」
そうして、招待会が終わるまで3人で話しながら過ごした。





翌日。朝食後に公爵夫妻へ辞去の挨拶を済ませ、スヴェトザールとサプフィールの乗る馬車はコズロフ領へ向けて出発した。
ガラガラと音を立てて揺れる馬車の中、サプフィールは昨日のザイツェフ姉妹とのやり取りを思い出していた。
ポルーシャは、スヴェトザールが社交界で人気な存在だったと言っていた。
それは分かる。たしかに顔も体つきも文句のつけようがない。何もかもに対して真面目で冷静で誠実で、一欠片のだらしなさも軽薄さもない。
伴侶にしたいと思う人はたくさんいただろう。
色んな相手からの求婚を断ってきたというスヴェトザールが、どうして自分との縁談には頷いたのか。そんな疑問が浮上した。
昨日ポルーシャに答えた通り恋愛結婚ではないのだから、自分に好意があって合意に至ったわけではない。
コトフ家も、父が王都で働いているものの指折りの貴族というわけではない。飛び抜けて裕福というわけでも有力というわけでもなかった。
規模の小さい子爵家だから伯爵家にとって影響力が少なく、扱いやすいと思ったからだろうか。
「うーん……」
窓の外を見ながら考え込んでいると、スヴェトザールが声をかけた。
「気分が悪くなりましたか? もしそうなら馬車を止めます」
「あ……いえ、大丈夫です」
本人に聞くのが一番早いんじゃないか。ふと思い至り、サプフィールは視線を窓からスヴェトザールに移す。
「あ、あの……スヴェトザール様」
「何でしょう」
「スヴェトザール様は……どうしてコトフ家との縁談をお受けになったのですか?」
聞くと、スヴェトザールがゆったりと首を傾げた。
「縁談に応じた理由ですか」
「はい。私との婚姻が決まる前は、スヴェトザール様の元にたくさんの縁談話が来ていたと聞きました。今まで断っていたのに、どうして私のときはそうじゃなかったのか……その、気になりまして……」
言葉を詰まらせながらの質問に、スヴェトザールは浅く息を吐いて座り直す。
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