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愛しのサプフィール

第6章 遠出


眉尻を下げながら言うと、ポルーシャは気まずげに口元に手を添えた。
「あらら……。あっ、でも縁談がまとまったということはコズロフ伯爵様はサプフィール様のことをお気に召されたということでもありますし……愛の言葉を囁かれたりなどはあるでしょう」
「……さあ。聞いたことないですね」
「じゃ、じゃあ、私たち他の令嬢には見せない特別な甘い顔とか、うっとりとするような態度とか……」
「スヴェトザール様は皆に平等にお優しくされています」
家庭内の事情を包み隠さず出してしまうのもどうなんだろうか。酒の残る頭で考えつつも、取り繕うにはもう遅かった。
「快適な暮らしは確保されておりますし、邪険にされているわけでもないので……これ以上を求めるものではないのかもしれません」
「え、え……政略結婚ってそんなに夢がないものなのですか……?」
「ポルーシャ」
失礼だ、と言いたげにカストーリヤが唖然とするポルーシャを短く睨む。
それからサプフィールをまっすぐ見つめた。
「サプフィール様、夫婦の問題に首を突っ込むことはできませんが……お話を聞くことならいくらでもできます。お気持ちを誰かに打ち明けたいときは、わたくしを、このカストーリヤを頼ってください」
「あ、いえ……そんな……」
社交辞令、とサプフィールは思ったけれど、カストーリヤの目は真剣そのものだった。せめて何かしてあげたいという意思が彼女の表情と言葉から滲んでいる。
「……」
初対面の令嬢に気を遣わせてしまった。しかも同情まで。爵位が上の貴族としての品格に欠ける。
しかし酩酊しているところを介抱された時点でそんなもの最初からなかったも同然か、とサプフィールは思い直した。
「どうせなら……楽しい話がしたいです。なので、友人として、たまに手紙を送ったり会いに行ったりしてもいいですか?」
控えめな口調でそう聞くと、カストーリヤは嬉しそうな顔をした。
「はい、もちろん!」
カストーリヤが大きく頷く。サプフィールとカストーリヤが向かい合っていると背後でむくれた声がした。
「お姉様ったら、ちゃっかりしてるわね。さっきまで私に小言しか言ってなかったのに」
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