第6章 遠出
「じゃあ〜、私とお姉様でお支えしましょうか。あっちのソファに行きましょ」
姉妹に両手を持たれながら移動し、すぐ近くのソファに座る。ちょうど三人掛けだった。
カストーリヤが従僕に声をかけ、サプフィールへ新しい飲み水を用意した。
「コズロフ伯爵夫人、お名前で呼んでもよろしいですか? 私たちのこともポルーシャとカストーリヤって呼んでください」
「ポルーシャ、馴れ馴れしくしないの」
ぐいっと詰め寄るポルーシャをカストーリヤが諫める。
「あの……2人とも名前で呼んでくださって大丈夫です」
「ありがとうございます、サプフィール様!」
「で、であれば……わたくしもサプフィール様とお呼びさせていただきます」
サプフィールの承諾にポルーシャは嬉しげに声を上げ、カストーリヤも控えめに頷いた。
「サプフィール様、私どうしても聞きたいことがございますっ。コズロフ伯爵との馴れ初めについて……!」
「……えっ」
ポルーシャの質問に、思わず固まる。
「ご存じでしょうが、コズロフ伯爵は領主としても評判がいいし真面目なうえ見目も大変よろしいから、ご成婚前は色んな婦人や令嬢から遠巻きにキャーキャー言われていました。浮ついた噂も一切なく、求婚を断られた人もいっぱいいるそうです」
「はあ」
「そんな鉄壁の伯爵のお心をどうやって射止めたのか、気になって気になってもう」
鼻息を荒くしながらポルーシャが前のめりになるのをカストーリヤが窘める。
「ポルーシャ、そんなこと初対面の相手に訊くものじゃないわ」
「いいじゃないの、お姉様。私まだ納得のいく縁談が来てないのよ? ぜひサプフィール様の体験を参考にしたいわ〜」
サプフィールは質問の意図を理解し、思わず苦笑いを浮かべた。
「あの……スヴェトザール様と私は、そういうのじゃないんです。家同士の都合で婚姻が決まりました」
成人を迎える時期に合わせて父が未婚かつ信頼のおける何人かの貴族に縁談の手紙を送った。それを受けると返事をくれた人と結婚することになっただけ。
それだけでしかない。
「期待に応えられなくてすみません。恋愛を経てはいないんです……」