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愛しのサプフィール

第6章 遠出


そうして招待会の会場の前に着く。扉の脇に立つ従僕が二人の姿を認め、扉を開いた。
「コズロフ伯爵ご夫妻でございます」
開かれた扉の向こうで、何人かの参加者がこちらを振り返るのが目に入る。
背後ではソーニャとドミトリーが一礼して二人を見送っていた。
スヴェトザールが左腕をわずかに曲げて差し出し、サプフィールはその腕にそっと手を添える。
サプフィールはスヴェトザールと歩幅を合わせながら、ゆっくりと入場した。
入り口付近には公爵夫妻が立っていて、一足先に来た招待客と挨拶を交わしているのが見える。ほどなくして前の招待客が離れ、スヴェトザールとサプフィールの番になった。
「こんばんは。ジュラヴリョフ公爵」
「おお、来たか。夫婦ともども楽しんでくれ」
公爵がスヴェトザールの背中をぽんぽんと叩く。
「では」
スヴェトザールが会釈し、サプフィールと広間を進む。
会場内は大客間とそこに隣接する部屋が開放された、複数の続き間だった。
もう既に30人以上が会場入りしている。皆立ったりソファや椅子に座っていたりと、各々歓談を楽しんでいるのが見える。
壁際には軽食がたくさん乗せられた卓が並び、広間の端では小編成の演奏による音楽が流れていた。
「……」
居心地が良さそうな会場だ。サプフィールがやや安心しつつ歩を進めていると、ふいにエスコートされていた腕がほどかれた。
「私はあちらへ挨拶に行ってきます」
そう言って、スヴェトザールが男衆の塊に向かっていこうとする。
「わ、私も一緒に……」
「あなたにとって退屈な話題しかないでしょうから、他の婦人や令嬢と交流してきた方がいいと思います。何かあったらいつでも呼んでください」
スヴェトザールはそのままサプフィールを置いて他の男貴族たちの輪に入っていった。
「えっ、あ……」
ほどかれた手が空中で所在なく伸ばされたまま、サプフィールは辺りを見回す。
皆、誰かしらと会話している。大事な社交の場だ。スヴェトザールのように情報交換やら何やらで交友を広げておくべきだ。
そう思いつつも、サプフィールの足は壁の方に向かい、少し柱の陰になっている椅子に座り込んだ。
無理だ。初対面の貴族に話しかけるなんて。領民に話しかけるのとは訳が違う。
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