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愛しのサプフィール

第6章 遠出


たまらずサプフィールは自分たちの乗っていた箱馬車のさらに後ろの馬車を振り返る。
そこから出てくるソーニャの姿を見て、ほんのわずかに肩の力を抜いた。
玄関ホールに通され、スヴェトザールは外套と手袋を従者に、サプフィールはソーニャに預ける。
「公爵ご夫妻がお待ちでございます。こちらへどうぞ」
公爵家の従僕に案内され、2人は通路を進む。平然と歩くスヴェトザールの少し後ろをサプフィールはカーペットを踏む音すら気にしながら付いていく。
従僕が一つの扉の前で足を止めた。軽く扉を叩き、中へ到着を告げる。
「コズロフ伯爵ご夫妻がお見えになりました」
小客間の扉が開かれる。 室内にいた公爵が立ち上がり、隣では夫人も笑みを浮かべて出迎えた。
「よく来てくれた、スヴェトザール。それから伯爵夫人。道中は大変だったろう」
「妻のサプフィールです」
スヴェトザールがサプフィールの隣に立つように移動し、手で指し示す。
「もちろん存じているよ。伯爵夫人の父上とも昔なじみだ」
言いながら、公爵がサプフィールにニコニコと笑みを向ける。
「お、お招きいただきありがとうございます」
サプフィールはドレスの裾をわずかに摘み、丁寧に膝を折った。
幾度となくしてきたはずの所作がぎこちない。まるで8歳児に戻った気分だった。
「早いものね。コトフ子爵の足元に隠れていた子がこんなに立派な夫人になって……」
「そうだなぁ、子爵から娘が生まれたと報告をもらった日がついこの間のように感じるよ」
ガチガチに緊張しているサプフィールを見て、公爵夫妻がそんなことを言う。
「ち、父がお世話になっております……」
記憶にすらない昔話に顔を赤くしながら、サプフィールはスヴェトザールの背後へと少しだけ立ち位置をズラした。
それから数分ほど会話を交わしたところで、公爵が言う。
「長旅で疲れただろう。部屋を用意してあるから、夕食までゆっくり休んでくれ」
従僕に案内されるまま、スヴェトザールとサプフィールは客室区画へと移動した。
「滞在中、伯爵夫妻はこちらのお部屋一式をお使いください」
公爵家の従僕がそう言い、扉を開く。
室内には既にソーニャとスヴェトザールの従者であるドミトリーがいて、せっせと運び込まれた荷物の整理をしていた。
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