【H×H ミルキ】夏の大作戦 〜軽井沢に行きませんか?〜
第6章 恋のバトンタッチ
イルミが小さく息をついた。
「……ほら」
「何だよ」
「ありがとうって」
「聞こえてるよ!」
「返事は?」
「……っ」
ミルキはぐっと拳を握った。
「……お、おう」
「…………」
「……どういたしまして」
穂乃果はまた小さく笑った。
それを見たミルキが、ますます顔を赤くする。
「な、何だよ! 可笑しいかよ」
「……そうじゃなくて」
穂乃果の胸の奥が、温かくなっていく。
「なんか……ミルキくんだなって」
「……は?」
「いつも、いろいろ考えてくれるから」
「…………」
「今日も、そうなんだね」
ミルキは目を逸らした。
「……まあな」
今度の声は、少しだけいつものミルキに近かった。
イルミは二人を見比べた。
「……じゃあ、そろそろランチ行けば?」
「あっ、そうだ。ランチ!」
穂乃果が顔を上げる。
「……だ、だな!」
ミルキも慌てて頷いた。
「店、ここからすぐなんだ」
「そうなんだ。どんなお店?」
「えっと……湖が見えるテラス席で、メニューは――」
そこまで言って、ミルキはようやく穂乃果の顔を見た。
「……腹、減ってる?」
「うん!」
穂乃果は笑った。
「なんだか、ミルキくんの声を聞いたら、急にすっごくお腹空いてきちゃった」
笑ったはずなのに、なぜか急に目尻に涙が滲んだ。
「……お、おい!」
ミルキがぎょっとする。
「ううん、違うの。なんか嬉しくて」
「そ、そうなのか?! じゃあ……大丈夫?」
イルミは黙って二人を眺めていた。
ようやく会話が成立したらしい。
「……じゃ、俺は帰るね」
「おう!」
ミルキが答える。
それから、慌てて付け足した。
「……あ、イル兄」
「何?」
「……ありがとな」
イルミは一瞬、ミルキを見た。
「うん」
それだけ答えて、踵を返す。
「あっ、イルくん!」
今度は穂乃果が呼び止めた。
イルミが振り返る。
「今日は、本当にありがとうございました」
穂乃果は深く頭を下げた。
「いろいろ、お世話になって……」
「うん」
イルミはいつもと変わらない顔で頷く。それから、ちらりとミルキを見た。