第12章 全て元通り
悟がなにか喋ろうとした時、椿のグラスには淡い金色のシャンパンが注がれ、悟の前にはノンアルコールの白葡萄の飲み物が置かれた。
このレストランで初めて、二つのグラスがテーブルに並んだ。
悟がグラスを手に取ると、椿も少し遅れてゆっくりとグラスを持った。
「…誕生日おめでとう」
「…ありがとう」
七年ぶりに悟から言われた祝いの言葉だった。
やがて最初の一皿が二人の前に並べられる。
広い店内に響くのは、銀食器が皿に触れる小さな音だけだった。
「…なんで今日は待っていた?」
悟の静かな声が聞こえると、椿は顔を上げた。
「…あ、今日は渡したいものがあって…」
椿はそう言うと昴に目配せをした。
悟はその椿の様子をジッと見ていた。
いつも悟のどんな態度にも眉一つ動かさない女が、今日はやけに悟を窺っていた。
その事実に、悟は握っていたフォークに力を込めた。
昴が椿の前に小さな箱を差し出した。
それを受け取った椿の手元を見て悟の目が細くなる。