第12章 全て元通り
昴は悟に書類とペンを渡すと、悟はあの時と変わらない誓約書を確認した後に、自分の名前をスラスラと書いた。
悟があまりにも何も言わずにサインをするものだから、椿は思わずその光景に見入ってしまった。
サインをした後、ペン先が紙の上で少し止まった。
悟はペン先を第一条まで戻すと、『第一条(異性関係)婚姻成立後、双方は配偶者以外の異性との不適切な交際、交際関係、肉体関係その他、婚姻関係を損なう一切の行為を行わないことを誓約する。』に大きく斜線を引いた。
「…この一条要らない」
そう言って悟はテーブルの上で紙を滑らせて、椿に差し出した。
椿は呆然と斜線の引かれた箇所を見ていた。
「…これで全て元通りだろ?」
そう言って、カップを持った時のカチャリとした音が部屋に響いた。
『結婚したって好きにしていい』
『三年後には離婚してあげる』
椿が望んだ形だった。
椿は少し慌てたように、顔を上げて悟を見た。
「結婚式ってなにか要望ある?」
「え?」
悟がそう切り出して、椿はなにか悟に言おうとしていたけど、なにが言いたかったのか分からなくなった。