第12章 全て元通り
「…要望と言うか…、大体の日取りや会場は両家で押さえてあるわ」
「は…、流石だね」
知らされずに進められている自分の結婚式に、悟は皮肉めいた笑みを漏らした。
悟がソファから立ち上がると、椿は彼を追って顔を動かした。
「さ、悟」
ドアノブに手を掛けた時、椿は悟を呼び止めた。
悟はゆっくりと椿を振り返った。
今日は目隠しをしているから、彼の表情が椿には全く分からなかった。
ジッと見てくる悟に、椿は上擦った声を漏らした。
「あ…、今週のあなたの誕生日に、いつものレストランを予約しているわ」
婚約した時の取り決めで、互いの誕生日だけは一緒に過ごす。
そう決めていた。
椿が悟を窺うように見上げて、悟はそんな椿に失笑した。
「…それ僕行ったことあるっけ?」
そう言って悟は応接室から出て行った。
部屋に残された椿はしばらく閉じたドアを見ていた。
毎年、椿が用意したレストランに悟が来ることは無かった。
本当に、『ただ元通り』になった。
それだけのことだった。