第12章 全て元通り
『あなたなんて初めから好きじゃなかった。』
そう言った時の悟の顔は覚えている。
彼は感情を表さないようにしていたが、その目はわずかに細められ、綺麗な六眼が少し揺れていた。
あの言葉を聞いて、悟はどう思ったのだろう。
それでも一晩中、部屋に居てくれたらしい彼を思うと、椿の胸は罪悪感で痛んだ。
また悪夢を見ずに目覚めたことよりも、椿はその時の悟の顔が忘れられない。
それからしばらく、椿は悟に連絡をしていない。
悟からももちろん無かった。
五条家に結婚を早めるように催促に行く気にもなれなかった。
どうしようもなく日々を過ごしていると、先に動いたのはまた彼の方だった。
「五条さんが来ましたね。」
昴は執務室から窓の外を見て、高専の車がエントランスに止まるのを見下ろしていた。
悟が来たという知らせに、パソコンを触っていた椿の指が止まる。
今まで、悟が来ても何の反応もせずに仕事を続けていた椿の変化に、昴はすぐに気が付いた。
「……ここに…、…待って。やっぱり応接室に。」