第12章 全て元通り
上半身を起こそうとする椿を、悟は片手で後部座席に押し付けた。
体がピクリとも動かない。
見えない何かに押し潰されている感覚だった。
椿が暴れることが何でもないかのように、悟は悠々と寛ぐように座っていた。
椿を見ることすらない。
ずっと無視をされて、感じたことのない屈辱感に、椿はとうとう悔しさで涙をこぼした。
それ以上椿が暴れることはなく、車中には彼女の嗚咽だけがずっと響いていた。
屋敷に着く頃には、椿はグッタリと寝ていた。
悟はやっと術式を解いて椿の体に触れた。
涙でぐちゃぐちゃになった顔が、革のシートに張り付いていた。
無理矢理彼女の顔をシートから離すと、椿の目がゆっくりと開いた。
椿は悟に抱き上げられて、揺れる体を居心地悪そうに悟の顔を見上げた。
「……もう椿の部屋に着く。」
「…眠りたくないわ…。」
夢を見たくないから…。
そう呟いた椿は、それでも重たい瞼を閉じた。