第12章 全て元通り
ーその場で悟だけが部外者だった。
昴に半身を預け、椿はゆっくりと目を開けた。
そして昴の胸元で囁くように言った。
「……殺して……。」
椿の言葉を聞いた途端に、昴は腰の刀を握りしめると、そのまま直哉に向かっていった。
「!!!」
刃先が直哉の目の前で止められた。
昴の手首を握りしめていたのは悟だった。
「……犬が……。」
悟の六眼が冷たく昴を見下ろした。
直哉の胸ぐらを掴んだまま、昴の手首を離した。
『無量空処』
その瞬間、昴の手から刀が落ちて、昴はその場に膝をついた。
呆然と動けないでいる昴を見て、椿の目が歪んだ。
悟は直哉からも手を離すと、彼もまた重力に負けるように地面に落ちた。
その二人を一瞥してから、体の向きを変えると、悟は椿に向かって歩き始めた。
自分に向かってくる悟を、憎らしげに椿は睨んでいた。
(…マズイ…、椿さんは今錯乱状態だ…。)
悪夢を見て起きた発作の後、椿は夢と現実の堺が分からなくなり、いつも攻撃的だった。