第12章 全て元通り
「……何度も?」
「そうよ何度もよ!!あなたは気付く機会が何度もあった!なのにいつも傍観者で、私が死ぬのを一度も止められたことなんてないわ!!」
椿は両手で顔を覆いながら叫んだ。
悟は椿が言った言葉の意味を理解出来ない。
『イカれた令嬢』
初めてその片鱗を見た。
「…はっ…。」
殴り飛ばした古民家の外から、乾いた笑いが聞こえた。
「……これはええな。悟くん、見てへんみたいやな。」
癇に障るイントネーションに、悟は顔を歪めて、直哉の方に向かって歩いた。
直哉の前に立つと、寝そべっている男の胸ぐらを掴んで体を無理矢理起こした。
「…どういう意味だ?」
「…勘弁してや。顎イカれて喋りづらいねん。」
ふざけた直哉の態度に、握った拳に力が入った時だった。
「椿さん!!」
昴が部屋の中に入ってきて、ベッドに寝ていた椿を当たり前のように抱き上げた。
先ほどまで体を強張らせていた椿は、昴の顔を見ると力を抜いて彼に身を任せた。
安心したように目を瞑り、安堵の息を吐く椿を見て、その光景に悟は眩暈すら覚えた。