第12章 全て元通り
悟の姿が一瞬消えた。
「!!」
次の瞬間、直哉の顔面に強い衝撃が走った。
直哉の体は後ろに吹き飛び、壁を突き破って、竹林の中まで飛ばされた。
普通なら死んでもおかしくない。
そこは禪院家の嫡男だけあって、命までは失わなかった。
悟はしばらく動かない直哉を見た後に、ベッドの椿へ視線を落とした。
椿は直哉が殴られたことなんて分からないかのように、虚ろな目で悟を見ていた。
崩れた壁から12月の冷気が部屋の中に入ってきて二人を包んだ。
「… 椿、帰るよ。」
悟は椿の顔に手を触れた。
押さえつけられたであろう指の痕が、くっきりと残っていた。
無理矢理……。
では無かった。
悟が感じ取っていた二人の気配は、どちらかが一方的なものでは無かった。
悟は眉を顰めて、黙って椿を見下ろした。
「……いやよ…。」
ポツリと椿の声が漏れた。
虚ろだった目に正気が戻り、ハッキリと悟の顔を睨んだ。
「…あんたは……、肝心な時に私を助けてくれなかった。何度も何度も助けてって言ったのに!」