第11章 イカれた世界
月明かりがぼんやりと暗闇を照らした。
竹林の中で、昴はひっそりと建っている古民家を見る。
独自で調べると言って、さほど時間は要していない。
元々椿は禪院直哉を調べさせていたため、彼の所有する土地や建物を把握済みだった。
そこから当たりを付けるのも難しい事ではなかった。
夜の暗闇に紛れて、昴の影も蠢く。
どうやら今日、昴は一つの役目を全う出来るようだ。
直哉と刺し違えても、椿の命令は完璧に遂行する。
その後に、彼女が心の底から笑える日を見られるのは自分じゃなくて良かった。
「…ふーん…やっぱり当たり付いてたんだ。」
急に現れた悟の気配に、昴は驚いたように声の方を向いた。
「本当、隠し事ばかりだな。」
悟はそう言うと、一歩一歩昴に近付く。
ここまで椿が禪院直哉を調べている。
もうあの二人に何かありますと言っているようなものだった。
そして、それが悟の気分を悪くさせることも分かっていた。
その予感に重たい足取りで、昴の前に立った。
「僕が行くから、お前はハウスだ犬っころ。」