第11章 イカれた世界
(…最悪の場合、本当に禪院直哉を殺さなければならない。五条さんはああ言ってるけど、御三家のしがらみを考えたら無闇に手は出せないだろう…。)
ー俺がやるしかない。
昴は決意したように拳を強く握った。
そんな昴の様子を見て、悟が昴に声を掛けた。
「…僕が知っている限りだと、椿と禪院直哉の接点なんてほとんど無いんだよ。こんなことをするような。」
禪院直哉が貪欲なのは知っている。
隙あらば、伊集院の恩恵を受けようとしていること。
しかし、悟の知っている直哉は、御三家を敵にするような無謀なことをする男じゃない。
そして椿も何故か昔から直哉を避けていた。
鬱陶しい男を避けるためだけには過敏過ぎるほどに。
こんな事態を起こしても、収拾する算段が直哉にはあるようだ。
「……あの二人、なにかあるの?」
僕の知らない『なにか』が。
そうでなければ説明がつかない。
昴は悟の言葉には振り向かなかった。
彼に椿の悪夢について、自分から話せるはずがない。