第11章 イカれた世界
同時に、あの最悪な記憶があるなら、恋人同士で愛し合った記憶もあるはずだ。
自分が今、椿に抱いている感情と似たものが、彼女の中にもあると確信する。
「五条家には連絡せんでええ。」
「…マジですか?」
「大マジや。椿は俺んとこ連れて帰る。」
軽い口調で喋る直哉に、大事になると助言するも、直哉は面倒くさそうに炳の隊員を置いて歩き出す。
(俺から離れたかったんやろ? せやのに結局、同じ目ぇ遭うてるやん。)
夢の最後の椿は、直哉が思い出しても悲惨な姿だった。
だけど結局、五条悟の婚約者になっていても、同じようにやつれている。
ーほんなら、俺の側に置いといてもええやろ。
むしろそれが本来の正しい自分たちの姿だと、直哉は思った。
(なに考えてんだこの人…、五条家と戦争する気か?)
椿を抱きながら歩く直哉の後ろ姿を見て、炳の隊員はこれがただ事ではないと危惧した。
そんな男に気が付いて、直哉は鼻で笑って言った。
「ええやろ? どうせ悟くんは、椿のことなんか気にもしてへん。」