第11章 イカれた世界
「う……。」
衝撃で一瞬気を失っていた。
椿は強く打った頭を押さえて体を起こした。
まず目に見えたのは、エンジン部分が大破し、フロントガラスが割れている光景。
そして運転席はエアバッグが作動しているが、運転席の彼は椅子とエアバッグに挟まれて頭からも血を流していた。
「……梅崎さん…っ。」
椿は運転手に手を伸ばした。
伸ばしかけた手が止まった。
ペタ。
ペタ。
ペタ。ペタ。ペタ。ペタ。ペタ。ペタ。ペタ。ペタ。
無数の手形が大破した車に群がっていた。
「はっ…いやっ!」
椿は小さく悲鳴を上げると、形振り構わずに歪んだ後部座席の下に身を隠した。
『ヴァ゙……ヵ、ヵ゙……ヱ゛ェ……』
『ヺ……ァ、ヵ゙ヵ゙……ヰ゛……』
『∴ヵ゙……ヱ゛∵ァ……ヺ……』
『ヸ、ヸ……ヵ゙ァ……∴ヱ゛……』
『ァ゙……ヲ、ヺ……ヵ゙ヵ……』
声とも言えない音が、頭の中に響いてきた。
椿は恐怖で奥歯を何度もぶつけながら、両手で耳を塞ぎ、震える喉から掠れた悲鳴を漏らした。