第11章 イカれた世界
悟に閉じ込められた時と、悪夢によく似ている感覚。
(…嘘……まさか……。)
キキー!!!
「きゃあ!」
急にハンドルが切られ、大きく揺れる車に、椿の体も後部座席で跳ね上がった。
鉄を削るようなブレーキ音が聞こえるのに、車の速度は加速していく。
「お嬢様!!体を伏せて下さい!!」
焦る運転手の声から、これが彼にとっても不測の緊急事態なのだと分かった。
椿は広い後部座席の下に潜ると、体を丸めて衝撃に備えた。
頭の中では警報が鳴り響いていた。
椿には呪霊は視えない。
だけど、この身の毛もよだつ感覚は毎晩味わっている。
(…いる…車の周りに…っ。)
考えている間も車は蛇行を繰り返して、椿の体は遠心力で後部座席の下を転げ回る。
「うわぁぁぁぁ!!」
「!!!!!」
運転手の悲鳴と大きな衝突音。
そして車に走る衝撃に、一瞬椿の体が浮かび上がった。
車は大きく道を外れて、山中に入り、やがて太い木に飛び込むように追突して停止した。