第10章 結婚しない
少しこの男に意地悪をしたくなった。
悟に振り回されている主への報いにでもなればと。
「…五条家への直談判が結婚の話だと?」
「……なに?」
「五条さんに話をせずに五条家に向かったなら、婚約破棄かもしれませんね。」
椿が五条家に向かった理由は、結婚の準備だ。
それは分かっていたが、どうしてもこの傲慢な男の鼻を折ってやりたかった。
「… 椿が僕と結婚しないって?」
鼻で笑っているが、彼が怒りを含ませているのは分かった。
「…どうでしょう…。俺には椿さんの考えていることなんて分からないですから。」
ちなみに結婚しないと言ったのも悟だ。
悟は正確には『離婚前提の結婚なんてしない』と言っていたのだ。
もちろん、椿には『結婚しない』しか伝わらなかったが。
「また俺を巻き込まないで下さいよ。俺は後から五条家に向かいますから、俺が迎えに行かなかったら、椿さんが発狂します。」
もう悟に殺されかけるのはうんざりだ。
昴は悟にそう言うと恵の背中に手を添えて、彼を道場の中に招き入れる。