第10章 結婚しない
陽気な口調で悟が二人に歩み寄る。
昴は領域展開で悟を取り込んだ時点で、彼が居たのを知っていたが、恵は悟の存在に気が付いていなかったのか、悟の登場に驚いていた。
「犬っころってなんだよ。昴さんだろ。」
悟が呼ぶ昴の呼び方に、よい印象を受けなかった恵が、少しムッとしたような顔で悟に言った。
「ご主人様の命令に忠実な奴って意味だよ。」
恵の頭を軽くポンと撫でながら、目隠しの悟は顔を昴に向けた。
「で?そのお前のご主人様は何をしてる?」
「…………。」
なるほど…。
散々椿のことを無視している割に、気になって自分に会いに来たのか。
……面倒くさ…この人。
「… 椿さんなら、五条家に行きましたよ。」
「……五条家?」
五条家と聞いて悟は、鼻で笑うように短く息を吐いた。
「相変わらずワンパターンだな。僕を無視して本家に直談判ね。」
ーいや、無視してたのはあんただから。
突っ込んでいいのだろうか。
どうやらこの男は、もっと椿が彼に縋らないと気が済まないらしい。