第10章 結婚しない
「… 椿がまた発作が出てるって?」
先ほどまで余裕があったように見えた悟にわずかに影が差した。
報告では、イカれた令嬢は毎夜発狂する精神疾患があると伝えられていた。
だけど、悟と一緒に夜を過ごす椿には、そのような兆候は全く無かった。
……少し話し過ぎてしまった。
悟の反応を見て、昴はすぐに口を噤んだ。
椿が悟に悪夢のことを知られたくないのは知っている。
彼女は、自分の精神疾患がこの婚姻のデメリットになると思っているからだ。
『自分の弱みは見せたくない。』
椿らしい思考だった。
何かを考えているように、口元に手を当てている悟の様子を見て、昴は悟がすぐに五条家に向かうと想像が出来た。
自分を通さず、面倒な二人がお互いに解決出来るなら、それ以上好ましいことは無かった。
二人で勝手にやってくれ。
これに尽きる。