第10章 結婚しない
恵の側には調伏を終えただろう式神の玉犬が、まだ小さい恵の体に寄り添うようにいた。
「…いい式神だね。その歳で調伏の儀を終えたなんて凄いな。」
恵はちょうど椿に引き取られた頃の年齢と近かった。
奇妙な既視感を覚えながら、昴は恵を見て目を細くした。
「……あんたは魔虚羅を調伏出来たって、調伏出来た十種影法術師はいないって聞いたけど…。」
半信半疑の目の中にも、確かな期待も込められていた。
その目を見て、昴は恵が五条悟の元に来た理由を思い出した。
『津美紀が幸せになれるなら。』
どこまでも境遇が似ていた。
自分が強くなる目的が、自分の為ではない事が。
昴は帳を下ろした。
術式を使う時は、禪院家にバレないようにするためだ。
いきなり魔虚羅を出すのかと、恵の小さな体が強張った。
手印を結び、昴が影から出した式神は玉犬だった。
恵の玉犬より大きい、格式が高い式神だと一目で分かった。
昴と同じ銀色の毛並みに、薄い青い目。
昴は自分の玉犬の頸をひと撫でしながら恵を見た。