第10章 結婚しない
元々、悟の意思なんて関係のない結婚だった。
椿の指一本で動いた話だったのだから。
あれから悟に何度連絡をしても無視されている。
椿はここ最近の悟の言動を思い返していた。
悟は変わった。
まるでこの婚姻を彼が望んでいるような錯覚さえ覚えた。
だけど、思い返してみたら、こうして結婚話を無視するのは昔からだった。
結婚に気の乗らない悟に、どうにかして結婚してもらう。
当初の予定に戻っただけだ。
そして3年後まで生き延びて、離婚する。
なんの問題も無い。
悟と一緒に暮らさない結婚生活は悪夢の毎日だろう。
初めからそう覚悟していて、生き延びることだけを考えていた。
彼と一緒に寝た夜に悪夢を見ないのは偶然の産物だ。
(もういい。悟の気まぐれな行動に振り回されるのはごめんだ。)
「やっぱり、俺も京都に行きます。」
荷物を使用人に運ばせて、車に乗り込もうとしている椿に昴は言った。
椿は少しだけ目線を昴に向けた。