第10章 結婚しない
震えている肩は本当に小さくて、昴は泣いている椿の肩を慰めるように撫でた。
『主よ。彼女を悪夢からお救いください。』
椿のベッドサイドに置いてある十字架と、何故か彼女がいつも持っているガラス玉が視界に入った。
無神論者の昴でも、思わずそう願わなければいられなかった。
それだけ叶うのなら、自分が大罪を犯すことなんて、彼女の苦しみに比べれば大したことなく思えた。
「…本当に一人で行かれるのですか?」
しばらくして、椿は仕事をあらかた片付けると、京都の五条家に行くと言った。
しかしその日、昴は伏黒恵に術式を教える日だった。
「伏黒恵に術式を教えるのは、別の日にします。」
「……いいから、悟に言われたようにして。」
椿の目には深い隈が出来ていた。
ここしばらく悪夢に苦しみ、眠ることが出来ていないのだ。
椿は結婚をどうにかしようと、悟の説得を諦め、五条家に直接話し合いをすることにした。