第10章 結婚しない
疲れた…。
もういっそ、彼女の望み通りに形式的な結婚をすればいいのだろうか。
椿と結婚すれば、望み通りに高専に属することができ、次世代の呪術師の育成に力を入れられる。
彼女の財力も魅力的だった。
特に一条昴は、今の呪術界には必要な人物だ。
自分と並ぶ実力に、椿に献身的に尽くす性格から見ても、恵や他の駆け出しの呪術師を任せられる。
改めて考えると、確かにこの結婚はメリットしか無かった。
彼女の心まで欲しいと思わなければ。
悟は大きなソファに背中を預けて体勢を崩した。
『僕が欲しいのはあの椿の笑顔だ。』
急に頭をかすめた自分の言葉に悟は我に返った。
『あの椿』?
一瞬、椿の笑顔を思い浮かべたが、すぐに脳裏から消えた。
悟は結婚した椿の笑顔なんて見たことがない。
なのに、一瞬浮かんで消えた椿の姿は、自分の隣で笑う椿の笑顔だった。
悟はあり得ない妄想に失笑した。
頭が勝手に都合のよい妄想をしたのだと片付けた。