第10章 結婚しない
身を乗り出して悟に掴みかかろうとする椿の体を、昴は慌てて引き寄せるように抱き直した。
昴の腕が椿の体をしっかりと包んでいる光景に顔を顰めながらも、悟はその隙に部屋の中に入ってドアを閉めた。
「結婚をしないなんて、許されないわよ!!」
「椿さん!!」
閉められたドアに向かって体を突き出す椿を、昴は何度も抱き直す。
しばらくしても、悟がドアを開けないのを確認して、椿は体の力を抜いた。
しかし、その表情はまだ怒りが現れていた。
昴は椿を床に付けないように身を屈めて、彼女のヒールを拾った。
そして、無防備に投げ出されている椿の足に、なにも言わずに履かせる。
椿はやっと、今の痴態が昴に見られていたと気が付いた。
途端に屈辱で顔が赤くなった。
今までこんな扱いを受けたこともないのに、よりにもよって身内に見られてしまったのだ。
本当はあのドアを思い切り叩いて怒鳴りつけたかった。
その気持ちをグッと堪えた。