第10章 結婚しない
椿が部屋から追い出された時、ちょうど昴が車から椿の荷物を持って悟の部屋の前まで来た時だった。
どいつもこいつも、勝手に人のマンションのオートロックキーを作りやがって。
伊集院家に、五条悟の尊厳を守るという体裁はないようだ。
昴は靴も履かずに追い出されている主を、瞬時に抱き上げた。
手に持っていた荷物が、マンションの共有通路に放り出される。
銀髪の隙間から心配そうに抱き上げた椿を見上げる昴の視線に、言いようのない怒りが込み上げる。
椿は昴に当たり前のように抱き上げられても、目線は悟から離れない。
「よくもこの私にこんな仕打ちをしたわね。」
どこぞの悪徳令嬢の台詞のように、恨みのこもった顔で悟に言い放つ。
いつもの悟だったら、すぐに昴から椿を引き離して、自分の腕の中に彼女をおさめるだろう。
だけど、今回は彼も引かなかった。
悟は椿のヒールを同じように通路に放り投げる。
「僕は椿と結婚しない。」
「なっ!」