第10章 結婚しない
そしてまだ用事はあると言うかのように、鞄から一枚の紙を出して、テーブルの上に置いた。
『結婚誓約書』となる走り書きされた紙に、悟は目隠しの奥で目を顰めた。
断言してもいい。
あの紙は数分もしない内に破かれるだろう。
そんな悟の心情など気にしないで、椿は「大切なことだから読んで。」と誓約書を悟の前に差し出す。
悟は誓約書を手に取り、その下に書かれた事項に目を通す。
第一条(異性関係)
婚姻成立後、双方は配偶者以外の異性との不適切な交際、交際関係、肉体関係その他、婚姻関係を損なう一切の行為を行わないことを誓約する。
…意外にまともだった。
その後も、婚姻後の互いの資産に関する取り決めが続いていた。
堅苦しいが、これも一つの形だと悟が納得しかけた時だった。
紙を握る悟の手に力が入った。
第七条(婚姻期間)
婚姻期間は三年間とし、期間満了後は、双方速やかに離婚の手続を行うものとする。
この女の頭にはなにが詰まっているんだ?
やはりこの紙は破るものだと認識して、悟は大きく息を吐いた。