第4章 因縁の残火
「人手はほとんど京都の方に割いてしまったから包囲網を敷くのはまず無理だ。加えてこの馬車がどんなに早くついても十二時前後。時間的に見ても手当たり次第捜索してては間に合わんな…」
そう言いかけた時…。
ジュッ。
斗亜の額から小さく白煙が立ちのぼった。
「あっちー!!!てめぇ!!斎藤なにしてんだよ!」
「こんなときによくもまぁ緊張感もなく眠れるな…」
「だからってこんなことしていーのか!悪魔め…」
「とにかくどうするよ?」
斎藤は無表情で煙草をくゆらせながら剣心に視線を向ける。
馬車の上から、豪快な声が降ってきた。
「ウダウダ言ってても仕方ねぇだろ!」
左之助だった。
「例え失敗しても砲撃の一度二度で壊滅する程、東京はヤワじゃねぇ!ここまで来たらあとは全力でぶつかるだけさ!」
ドスッッ!!
「ぢっ!?!?!?!?」
馬車の屋根を突き破る勢いで、斎藤の刀が左之助へ突き上がった。
「てめぇ!!一度ならずも二度も刺しやがって!!殺す!!」
「黙ってろと言っただろうがこのボケ。話のコシ折りやがって」
左之助は牙を剥き、斎藤は煙草を咥えたまま平然。
そして剣心は困ったように眉を下げる。
「左之…志々雄は何も東京壊滅を狙っているのではござらんよ」
剣心の声は静かだった。
しかしそこに宿る緊張は、馬車を凍らせるほどの鋭さがあった。
「もし今、見知らぬ船が一隻でも突然東京湾に現れ砲撃を開始すれば…間違いなく東京湾は大混乱に陥る…」
斗亜も続ける。
「当然、今の政府にそれを鎮める力はない。東京はすぐさま無法地帯と化し、政府機能は完全停止するって寸法だ」
斎藤は煙を吐き、淡々と告げる。
「…成程な。よーくわかったぜ…事態は刻一刻、逼迫してるってな」
左之助が拳を握りしめ、低く呟いた。
そして。
「ならばなおさらの事!!!翔ぶが如くーーーー!!!!」
「「「うるさいな…」」」
斗亜、剣心、斎藤が珍しく声を揃えるほど、車内はもはやカオス一歩手前だった。