第4章 因縁の残火
「いや…志々雄の“狙い”は別にある。出発前に書いた手紙…あれが全ての鍵でござる」
「心配せずとも、ちゃんと届けるよう手配はした。だが…」
斎藤はじろりと剣心を見る。
「…あれは何なんだ?」
剣心は静かに馬車の窓へ視線を向ける。
「警官五千人で“五百の兵”は止められるかもしれぬ。だが“五百の火種”までは止められぬ」
「火種…」
斗亜が眉を寄せた。
「京都の街を守るには、政府でも警察でもない。幕末から京都を見守り続けてきた。あの者たちの力が必要なのでござるよ」
その声音には確信があった。
「…なるほど。御庭番衆を動かす気か」
斎藤が煙を吐き、呟く。
「あいつらなら…京都の火を、京都で止められるな」
斗亜は思わず頷く。
剣心はゆっくりと目を閉じ、拳を握った。
「で?その“火種”ってやつをどうするつもりだ?」
左之助が馬車の屋根をドンと叩く。
「先の見通しがあんだろ?剣心!」
剣心は視線を上へ向ける。
「間に合えば、止められる。間に合わねば…京都は灰になる」
左之助は鼻を鳴らした。
「へっ、面白ぇ。やるしかねぇじゃねぇか!」
「とんでもない、賭けだな」
斗亜が息を吐く。
「志々雄の船…海上砲撃…東京…時間が足りねぇ…」
斎藤が斗亜を横目で見る。
「焦るな。だからこそ大阪へ行くんだ」
剣心は斗亜の肩に手を置いた。
「斗亜、覚えているでござるな。志々雄の“本命”は京都ではなく、政府の中枢は東京でござる」
「あぁ…理解してる。だけど、間に合うのか?俺たちだけで…」
不安な顔をして斗亜は小さく呟いた。
黄昏がしずかに空を二分していた。
紫を帯びた橙色の空が馬車の窓から流れ込み、揺れながら剣心たちの顔を照らす。
ゴト…ゴト…。
馬車はひたすら大阪へ向けて疾走しているが、状況は刻一刻と悪化していた。
「大阪の方には電信で連絡したが…」
斎藤が煙草を軽く鳴らしながら口を開く。