第4章 因縁の残火
「あ゛ーーーー!!逃げてんじゃねぇ!!コラ包帯ヤロー!!!」
空に響く怒号に、剣心も斎藤も頭を抱える。
「まったく…」
だが剣心は、ふっと笑った。
「左之。お前がいなければ“煉獄”を撃沈するまで持っていくことはできなかった。左之は、お前が思っているよりずっと頼りになる男でござるよ」
斎藤は煙草を咥え、肩をすくめる。
「言われずとも百も承知だ。だがそれでも奴が阿呆であることに変わりはない」
「どうやら…京都も無事みたいだな」
斗亜は甲鉄艦を降り、京都の方角を見る。
暗闇に炎の光はない。
「確かに火の手は上がっておらんが、まだ分からぬよ…」
「ま、でも操達なら大丈夫だろ」
斗亜がニッと笑い剣心を励ますように言う。
剣心は小さく頷いた。
「初戦は、俺達の勝ちだ」
「そうなのか…?」
ガシッ!
斗亜が首をかしげると、左之助が肩を組んでくる。
「当たり前だ!!まずは一勝!!頑張ろうぜ、斗亜!!」
「お前なぁ…」
「“お前”じゃねぇよ!! 相楽左之助だ!!」
「はいはい…わかったよ、左之助」
照れ隠しなのか、斗亜は視線をそらし、しかし口元は笑っていた。
斎藤が刀を鞘に収め、つまらなそうに言う。
「くだらんやり取りはそのへんにしろ。京都に戻るぞ」
その声音には、だが確かな安堵が混ざっていた。
「…行くでござるよ」
剣心が小さく呟く。
四人は夜の海風を背に、馬車へと乗り込む。
比叡山での決闘へ。
志々雄真実との、最終決戦へ。
馬車の車輪が動き出す頃、夜明け前の空は、静かに蒼へと変わり始めていた。
ザワザワと揺れる空気が、京都府庁の前庭を支配していた。
火災の煙はすでにほとんど上がっていないが、そこに立つ警官たちの足取りは重く、その表情は一様に暗い。
“戦”の後の、静かなざわめき。
斎藤一が歩み寄り、淡々と報告する。
「全焼、零件。半焼七件。ぼやに至っては五十弱。しかし、いずれもすぐ鎮火された」
「なかなか奇跡的な数字じゃねぇか」
左之助が腕を組んで言い、斗亜も頷く。
「人的損害の方は…?」
斎藤はわずかに目を伏せる。