第4章 因縁の残火
志々雄一派の“最速の剣”。
微笑む殺人鬼。
ここから先はまさに、死線の縁だった。
「場所は比叡山の北東中腹――六連ねの鳥居の祠(ほこら)。俺たちのアジトでだ」
志々雄真実は、沈みゆく“煉獄”を背に、まるで燃える海を舞台とした芝居の主役のように広く腕を広げた。
「そこでなら一切の邪魔は入らん。もちろん当方は…」
腰に手を当てて、不敵に笑う。
「俺と“十本刀”だけで迎え撃つ!」
その声は海面を震わせるほど通る。
斗亜は剣心の隣で、ぐっと奥歯を噛みしめた。
「つまり…十対四の決闘ってわけか…」
数だけでいえば圧倒的不利。
だが志々雄はそれを誇りにするどころか、むしろ“楽しみ”と捉えているようだった。
斎藤が一歩前に出る。
「それでも構わんがな。どうせなら三対三の方が手っ取り早いんじゃねぇか?船が沈むまで、まだ時間はある」
その言葉に、剣心が眉をひそめた。
「斎藤!」
ガシッ。
剣心が斎藤の刀に手をかけ、鞘から抜かれないよう押さえた。
「…何の真似だ?」
斎藤は不満げに目を細めるが、剣心の視線は真っ直ぐ志々雄へ。
「比叡山六連ねの鳥居の祠…委細承知した」
その声音は静かだが、芯には鋼のような決意が宿っていた。
志々雄は満足げに頷く。
「志々雄様!脱出の用意できました、さ、早くッ!」
部下が呼ぶと、志々雄は剣心から目を離さず告げた。
「抜刀斎。今も昔も、あんたは俺にとって“国盗りの余興”に過ぎない。だが…」
炎に照らされた包帯男の口元が、かすかに吊り上がる。
「今この時から、こちらも命を賭けるに値する余興になった。この先、俺に“隙”はない。覚悟してかかってこい」
「志々雄…」
斗亜は燃え盛る残骸を見つめながら、小さく呟いた。
やがて志々雄、宗次郎、十本刀の影が小舟に乗って闇へと消える。
静寂が訪れた、その時…。
「よっしゃあ!!!相楽左之助ッ!!只今到着!!さぁ志々雄真実はどこだ!!」
爆発音よりうるさい雄叫びを上げながら、波間をかき分けて左之助が走ってきた。
「志々雄なら…あそこだよ?」
斗亜が指をさしてぼそり。