第4章 因縁の残火
「で、二人とも人斬りに戻る決心はついたか?」
「さぁ?」
「…どうでござるかな」
「まあいい」
斎藤は顎で合図する。
「急ぎの話だ。さっさと上がってこい。うるさい奴も今、飯に出てる」
「うるさい奴…?」
斗亜は首を傾げつつ、中へ入る。
「「京都大火!?」」
「あぁ」
斎藤は煙草に火をつける。
「張から引き出した情報だ。加えて、今朝の警ら中に不審者を捕縛。尋問したら、京都大火の下準備をしていた工作員だと白状した」
煙を吐く。
「決行は今夜十一時五十九分。まず間違いねぇ」
「妙でござるな…」
斎藤が地図を指でなぞる。
「数ではこちらが圧倒的に上だ。だから奴らは奇襲と暗殺に重きを置く。京都大火もその延長線上…のはずだ」
「だけど…こんなに簡単に情報が漏れるのはおかしくないか?」
斗亜が呟く。
「情報漏洩は奴らにとって死活問題のはず…」
沈黙が落ちる。
「張にも、暗殺が向かうと踏んで張っていた」
斎藤は歯を鳴らす。
「だが、気配は一切なかった。まるで…“好きなだけ情報を取れ”と言わんばかりだ」
剣心が静かに口を開く。
「…京都大火の裏には、十本刀にすら知らされていない、別の狙いがあるでござるな」
地図が乱暴に広げられる。
「池田屋事件の模倣…国盗りも復讐も楽しむ志々雄なら、必ず“もう一つの遊び”を仕込む」
指が止まる。
「…東京だ」
剣心が断言する。
「京都大火は第一段階。真の狙いは、船による東京砲撃でござる」
「なるほどな…」
斎藤は唸る。
「京都は囮。人と目を引きつけるための布石か」
「時間がない!」
「急ぐでござるよ!」
剣心が扉に手をかける。
ガチャ!
「で、また俺は置いてけぼりか?」
その瞬間…。
ガッ。
拳が剣心の頬を撃ち抜いた。
「今度はそうはいかねぇ」
「兄貴!!?」
斗亜振り返ると、悪一文字を背負った男が立っていた。
鋭い視線で、剣心を睨みつけている。
「あんた…薫さんのとこに居た…左之助」
斗亜は、剣心を殴り飛ばした男の顔を見て、遅れて記憶を掘り起こした。