第4章 因縁の残火
「飛天御剣流は、この九つの斬撃を“同時に”叩き込む」
次の瞬間、空気が裂け、九筋の白い線が比古の刀先から走った。
ドドドドドドドドッッッ!!!
地面に九つの深い斬り痕が刻まれ、舞い上がった砂が二人の顔を打つ。
「これが飛天御剣流 九頭龍閃 だ。瞬速の突進と九撃同時の乱撃術。防御は不可能、回避も不可能。“必殺の初撃”だ」
斗亜は思わずゴクリと喉を鳴らした。
「(さっきの…あれが…)」
剣心も息を飲む。
動けなかった。
さっきの“手加減された”九頭龍閃でさえ、足がすくむほどの威力だった。
比古はニヤリと笑った。
「感心して固まってんじゃねぇ。ほら、どっちか先に撃ってこい」
「な…いきなりなんて無茶を!!」
「手取り足取り教えても無駄だ。技ってのは一度“斬られた痛み”で覚える方が早えんだよ」
ザッ、と比古が刀を持ち直す。
「さあ来い。どっちが先だ?」
剣心が斗亜を一瞥し、静かに前へ出た。
「では…参る!!」
逆刃刀が弾けるように抜かれる。
地面が消えたような神速の踏み込む。
「飛天御剣流――九頭龍閃!!」
九筋の斬撃が一斉に比古へ襲いかかった。
だが。
ズダンッッッ!!!!!
比古の刀が一瞬だけ光をまとったように見えた。
次の瞬間、剣心は地面に叩きつけられていた。
「兄貴!!」
思わず斗亜が駆け寄る。
剣心は苦しげに唇を噛む。
「まだ…足りねぇ…」
比古は剣心を見下ろし、冷たく言った。
「次、斗亜」
「…やるしかねぇんだな」
斗亜は刀を構え、息を吐く。
剣心が負けた事実にわずかに心を乱されたが、すぐに抑えた。
「飛天御剣流――九頭龍閃ッ!!!」
兄を越えんとする気迫で、九つの斬撃が放たれる。
しかし…。
ドガァァァァン!!!
斗亜の体も大きく弾き飛ばされた。
「ぐっ…!!なんで…同じ技なのに…」
「完璧だったぜ。だが完璧な“形”をしてようと、威力は全く別だ」
比古の声は淡々としている。
「同じ飛天御剣流の同じ技だろうと、使い手が違えば“力”も“速さ”も“気迫”も違う。その差が技の差になる」
剣心と斗亜は唇を噛みしめる。