第4章 因縁の残火
比古の刀がそこに“ある”のに、見えない。
斬られる。
そう、直感した。
ガァァァァッ!!
斗亜は咄嗟に刀を立てた。
比古の刀が斗亜の眉間に止まる。
一瞬の静寂。
比古が刀を引いた。
「…合格だ」
斗亜はその場に膝から崩れ落ちた。
「は…?」
剣心もポカンとする。
比古は刀を肩に担ぎ直し、言った。
「斗亜。お前は、剣心と同じ道のようで、違う道を歩んだ。痛み、血、死線。その全部で剣を覚えた。心眼の素質は“剣心以上”だ」
剣心は目を丸くした。
比古は続ける。
「―奥義を受ける資格は、お前にもある」
斗亜は驚いて目を見開いた。
「…!俺…にも…?」
比古は笑う。
「もちろんだ。お前は弟子で…そして、飛天御剣流の“影”だからな」
斗亜の手が震える。
剣心が弟の肩に手を置いた。
「よかった…でござるな…斗亜」
斗亜は涙をこらえ、うつむきながら笑った。
「あぁ…やっと…俺も…師匠に…認められた…」
比古は空を見上げた。
「さぁここからが本番だ。志々雄を倒すための奥義…二人まとめて叩き込んでやる」
滝の音が、まるで歓喜の咆哮のように山に響いた。
滝の水飛沫が冷たい針のように肌を刺す。
剣心と斗亜は、比古の正面に正座していた。
空気は張りつめ、山全体が静まり返ったようだった。
比古は静かに口を開く。
「いいか?さっき見せた九つの斬撃は、飛天御剣流の根幹と言っていい。まずは復習だ。剣術における斬撃は九つしか存在しない」
比古は地面に一筋の線を引き、そこから九方向へ向かって刀を滑らせる。
「始めに【唐竹(切落)】、【袈裟斬り】、【逆袈裟】、【右薙(胴)】、【左薙(逆胴)】、【右切上】、【左切上】、【逆風(切上)】、そして最後に一点を貫く【刺突】」
剣心と斗亜は真剣な眼差しでその軌跡を追う。
「どの流派のどんな技だろうと、斬撃はこの九つから構成される。防御も同じ、すべてこの九つへの対応型だ。だが…」
ザッ!!
比古が急に姿勢を変え、地面が鳴るほど強烈な踏み込みを見せる。