第4章 因縁の残火
「ほらよッ!」
比古が鞘で払って反撃に転じる。
ドッ!
斗亜の腹に拳がめり込む。
「が…っ!!」
斗亜の体がくの字に折れ、吹き飛ぶ。
地面に転がり、腹を押さえて咳き込む。
剣心が駆け寄った。
「剣心、来るな。こいつは…“こいつ自身の修行”だ」
比古の低い声が遮る。
斗亜は血を吐きながら立ち上がった。
「まだ…まだ行ける…!」
フラついた足で地を踏みしめる。
握る刀が震える。
だが、目は折れていない。
比古が肩をすくめる。
「その根性だけは昔から変わらねぇな。だが根性だけじゃ俺には勝てん」
キンと刀が鳴る。
比古の気配が一瞬で変わった。
「(やる気だ…“師匠の本気”だ…!)」
斗亜の喉からごくりと音が鳴った。
「飛天御剣流――九頭龍閃!!」
ズガガガガガガガガ!!!!!!
一瞬で九方向から襲いかかる連撃。
眼で追えない。
反応もできない。
剣心でさえ見たことのない技が繰り出した。
「くっ…るぁぁぁぁぁ!!!」
斗亜は叫び自分の“本能”を全開にした。
体を捩り、地を蹴り、刃を叩きつける。
ガガガガガガッ!!!!
完全防御ではない。
ただ、“殺されないように”全身を使って捌く。
剣心は信じられないものを見るように斗亜を見つめた。
「(兄として認めたくはないが…兄として悔しいが…斗亜は、拙者より“師の剣”を体で理解している…)」
斗亜の体に無数の打突痕が走る。
それでも切り伏せられない。
比古が目を見開いた。
「受けきった…だと…?」
斗亜の息は荒い。
膝が震えている。
だが、倒れない。
「まだ…いける…師匠…次…来いよ…」
比古はふっと笑った。
「馬鹿弟子…まったく…成長したじゃねぇか」
次の瞬間。
比古が斗亜に向けて、一歩踏み込んだ。
それは踏み込みとは呼べない。
空気が爆ぜ、大気が歪む。
「飛天御剣流・奥義に至る前段心眼(しんがん)、会得してみろ」
「心眼…?」
「心を読む技だ」
斗亜は一歩下がる。