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緋色の誓い

第4章 因縁の残火


滝の轟きが大地を揺らす中、比古と斗亜は互いに静かに立った。

空気が張り詰める。

剣心は痛む額を押さえながら、その光景を見ていた。

兄として、弟子として、そして剣客として。

「来い。斗亜」

比古は片腕をだらりと下げ、もう片方の手で鞘を軽く叩く。

挑発ではない。

“受け止める準備はできている”という宣告そのもの。

その構えだけで、斗亜の背筋にゾクリと寒気が走る。

「(やっぱ…師匠は化け物だな…昔から、俺の全力の一撃でも…眉ひとつ動かなかった…)」

だが、今日は違う。

逃げない。

誤魔化さない。

十三の頃のように飛び出していくこともしない。

斗亜はゆっくりと剣を握り直し、呼吸を整えた。

「…行きます」

一歩。

二歩。

踏み込みの静かさに反して、地面がビシリとひび割れる。

シュッ!

斗亜の影が消えた。

「ほぉ」

比古が笑う。

次の瞬間…。

ガガガガガガッ!!!

“同じ場所へ”速度を変えながら連打を叩き込む、飛天御剣流特有の高速三段打ち。

鋭さは剣心よりも粗いが…重い。

比古は一撃一撃を受け流すたび、岩のような足元が微かに沈む。

剣心は息を呑んだ。

「(兄の俺より…斗亜の方が、打ち込みが“重い”…?)」

最も違うのは “躊躇の無さ”。

剣心の剣は「殺さぬ」ために緩むことがある。

だが斗亜の剣は違う。

痛みで覚え、死線で鍛えた剣筋。

守るために迷わず振り下ろす剣だ。

「おらァ!!」

斗亜が地を抉って跳び上がる。

落下と同時に刀を振り下ろす。

比古は鞘でそれを受けた。

ガッッ!!

斗亜の刃が、鞘にめり込んだ。

「ほぅ…本気でいったな」

「当たり前だろ…師匠が相手なんだから…!」

斗亜が押し込む。

比古が押し返す。

双方の足元の岩肌が砕けた。

比古は目を細めた。

「(この馬鹿弟子…昔から“本能で剣を振るう”タイプだったが…成長の仕方が、剣心と全く違う…)」

剣心の剣、技術、理、精神が均等。

斗亜の剣、本能、直感、痛み、経験すべてを一振りに乗せる “野性の剣”。

それは飛天御剣流の本来の姿に近い。
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