【ヒロアカ】Until You Live【爆豪勝己】
第3章 【二巡目】
爆豪はポケットに両手を突っ込んだまま、外されかけていくカチューシャをちらりと横目で盗み見た。
ここで正直に「お前は何でも似合う」と真っ直ぐ言える男なら苦労はしない。だが、爆豪勝己という人間は、悲しいかなそういう風にはできていなかった。
彼はポケットの奥で拳を握り、ぼそりと低く呟く。
「……別に、子供っぽいっつっただけで、似合わねぇとは言ってねぇ」
翻訳すると『めちゃくちゃ似合ってるけど、ガキっぽくて無防備だから俺の気に食わないだけだ』である。
「ぶっ……!」
隣で芦戸が爆笑を堪えて肩を激しく震わせている。
爆豪は芦戸を一睨みして黙らせると、そのまま無言でスタスタと店の奥へと歩き出した。
数秒後、戻ってきた爆豪の手には、いつの間にか小さなショップの紙袋が握られていた。
爆豪は無造作に透の頭へ紙袋から取り出した中身を乗せた。――シックでシンプルな、細い黒色のリボンだった。
「ガキ臭ぇなら、こっちで締めりゃいいだろうがよ」
カチューシャが先程の大きなリボンから、大人びた細い黒リボンに代わる。すると不思議なことに、子供っぽさが綺麗に消え去り、上品な大人っぽさが絶妙なバランスで加わった。近くで見ていた店員が「わぁ……!」と小さく感嘆の声を漏らす。
芦戸が即座にスマホを構えた。
「ちょっと待って写真撮る! 二人とも動かないで!」
「わ……、すごい、雰囲気一気に変わるね……」
透は鏡の中の自分をじっと覗き込んだ。可愛いのはもちろんだが、何より『人が選んでくれたもの』という事実に、胸の奥からじんわりと愛着が湧いてくる。
だが、ふとあることに気づいて慌てて自分の頭を触った。
「待って、これ、タグは?? 値札ついてないよ?」
爆豪はそっぽを向いたまま、鼻を鳴らす。
「知らねぇ」
知らないはずがない、レジで自分が一瞬で会計を済ませてきたのだから。価格は普通の学生が気軽に買うにはそれなりの額だ。要するに、透に変な不審物を買わせる隙を与えないための、超強引な先制プレゼントだった。