第14章 決別
◇◇◇
ヴェルツ邸に帰ってきてすぐのことだった。
「父さん」
妙にまっすぐな声で息子は父に告げた。
「いざという時に僕が使えないこと、もう、わかったでしょう。このまま僕を将来要職につけたとしても、今回、皆さんの前で失った信頼が後を引きます」
「……その時父さんはまだ、僕の身のふりをどうにか考えようとしてくれていて」
「でも、僕がずっと開き直ってるのを見るうちに色々と諦めたみたいだった」
もういい。どこへなりとも行け。
父は、最後に息子を見ず、そう言った。
父さん! もう一度機会をあげて下さい!
最後まで、兄はノルバートを守ろうとしてくれていた。
しかし。
いいんだ、ごめんね。兄さん。
当の弟にそう言われ、とうとう黙ってしまった。
話を終えたノルバートは、シシィに向き直った。
「……ここまで感覚が違うと、両方は選べない。もうわかってるんだ」
「正直なところ……もうあまり未練はないよ。実は国籍もこっちに移すつもりで準備していて。だから、僕自身はけっこう大丈夫。今日はごめんね。たくさん聞かせてしまって」
「……国籍まで、変えるの」
シシィがやっと、言った。
ノルバートは頷いた。
「うん、……僕の家は多分、相当な恨みを買ってると思う。今のところ問題は起きていないけど、いつかしがらみが追いかけてこないとは限らない。……どうしても、あの国から来たヴェルツの息子、のままだとこっちへ影響が出てしまうリスクが気になるから、変えておきたいんだ」
そこまで聞いたシシィは、思わず、はあ〜〜、とため息をついた。
「……ほんと、ノルバートって、できる事全部やるんだから……」
「それは、やるよ」
あまり聞かない、はっきりとした声色だった。
「関わってる人に何かあったら、本当に嫌なんだ」
しばらく、二人は黙っていた。
「あの、あのね」
「シシィ」
シシィが言いかけたのと、彼がまた口を開いたのが、同時だった。
珍しく、ノルバートが譲らないで続けた。
「今日の話は、どうしても内容が濃すぎたと思う。だから……今、無理に何か答えないで、ゆっくり君の気持ちを探して欲しいんだ。その……リスクの面も含めて」