第13章 あの頃の話
「まずかったも何も、あの人馬のおっさんはこの屋敷の客の一人だぞ! 外国人同士で言葉は通じなかったとは思うが、普通に学者だぞ。その人からギルド職員に家畜扱いを受けたとクレーム来たんだよ。お前、その辺の感覚どうなってんだぁ? 故郷にはああいう種族ぜんぜんいねえの?」
「いっ、いることはいました……が」
故郷で彼らを全く見たことがなかったわけではない。だが、非常に賢い種のため、個人が無許可で所有していい生き物ではないと教えられていた。道楽で人馬を飼育してしまう貴族や金持ち自体はそれなりにいて、そこに適切な指導を入れ、躾けるなり、それが難しければ管理を代行する事もヴェルツの職務の一つだった。
そうは言っても、ノルバート自身は若すぎたために現場に出た経験はないのだが。
オーデンはどうしたものか、と言うようにため息をついた。
「お前、ちらほら違和感はあったけどよ、かなり純人間主義きついよな。気が弱いせいでわかりにくかったが……相手が少し人型から外れると露骨に出る」
「……っ」
「おぉい、なんか言え」
「申し訳、ありません……」
「ガチだぞ」
「……すみません……」
「今から依頼人とあの学者にも謝罪すんぞ!」
「……はい」
◇◇◇
「ハァ〜〜〜まあね、若い人ですからね、これから変わることもあるでしょう」
オーデンの誠意あってか、謝罪を受けた学者は最後にそう言って場を締めた。
帰りの汽車でも、ノルバートは青ざめてほとんど黙りこくっていた。
そんな彼にオーデンはいろいろと注意をした。
「お国柄だろうけどよぉ。もしこっちでやっていきたいなら今日みたいなのは絶対に直さんとだめだ」
「……はい」
「あともう一つ大事な話だが、出自のことはあんま他人にぺらぺら言うなよ。お前は別に手は汚してないみたいだからおれ自身は気にしねえけどさ」
実際、後でわかったが、オーデンはギルドにはこの件を報告せずに処理してくれたようだった。
ヴェルツ家の職務を継ぐために存在していたノルバートの世界が、その日、大きく揺れた。