第13章 あの頃の話
裏口入学を拒んだ少し後。ノルバートは初めて、異国の土を踏んだ。
家からの仕送り自体は十分にあった。だから、留学後すぐギルドに加入したのは、純粋に実戦経験を積むためだ。来年には故郷へもどり、あの落ちた名門を再受験しなければと考えていた。
ただ、そう言いながらも、できる限り遠い国を選んではいた。
今思えば。少しでも、「ヴェルツ家の息子」を休みたかったのだと思う。
「おい、お前っ?! 何してんだ!!」
先輩であるオーデンに襟首を掴まれたのは、春先の祭りの期間、ある資産家が持つ広い庭の警備を任された日だった。資産家は祭りのために広場を一部貸し出し、そこには様々な屋台や小物売りがずらりと並んでいた。
ノルバートは気のいい印象だった彼の本気の怒りに動揺しながら答えた。
「すみませっ……その……庭から人馬が脱走しかけていたので、人混みへ行ってしまう前に引き留めて依頼人に一報を入れ指示を伺いました」
「まじかよ。で?」
オーデンは更に詰めた。
「庭に連れ戻した後、魔獣をこのまま放し飼いは危険だと思ったので、せめて魔法式の首輪をつけるか、庭に結界は……必要、かと……その旨も馬小屋番の方と依頼人に伝えました」
その時のオーデンの顔を、ノルバートは忘れることができない。
「対応、まずかったでしょうか……」
どこかで大きな間違いをしてしまったのだ、それだけはわかった。
しかし、状況はまだ理解しきれていないノルバートにオーデンは荒い声で説明した。