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閉店屋の恋は進まない

第11章 少しずつの勇気


 ノルバートはいよいよ固まった。

「意見」

「うん」

「その」

「すてっ……す」

「えっ?」

 小さすぎるその声にシシィが聞き返すと、彼はますます恥ずかしそうだった。

「……ごめん、女の子のおしゃれに何か言うのいいのかな、ってなってしまっているだけで、さっき言おうとしたのもよくない意味じゃないんだ」

「あっ! そっ、そだよね」

 彼の口から女の子、と言う言葉が出たことに、妙に心臓が高鳴る。

「でも大丈夫! いま、わたしから聞いてるし……ていうか、……もしかしてだけど、昨日の彼氏面の問題気にして、る? よね?」


「キュ」

 ノルバートの喉から、聞いたことのない音がでた。
 そして、間。
 彼はやっと言った。

「いや……気にするよ……」

「まじめ〜!」

 小さくなる彼の姿にシシィの緊張が僅かに緩む。
 そのおかげで、次の手を思いついた。

「じゃあ、じゃあ、一回ためしで……いつもの、作品とか! 見てくれてるあの感じでどう? ですか?!」

「いつもの、とは」

「よくやってくれてるやつ!」

「それなら、うん、それなら。……わかった」

 彼は落ち着こうとするように息を吸った。

「編み込みが複雑で……物語の挿絵にいそう。それに本当に器用ですごい。素人目にもお洒落だと思う」

 急に流暢になった。

「……ほんとにいつものがきた!」

「あっ、嫌…?」

「嫌じゃないよ嫌じゃない、ありがと!」

 シシィが照れるやら面白いやらでついつい吹き出してしまうと、ノルバートもようやくつられて笑った。
 少しだけ、普段の空気が戻った。

 そのあとはしばらくたわいもない会話をどうにか続けた。
 最近出た新しい本がシリーズを追うごとに分厚くなっていて、ついに最新作は上下巻に分かれたこと。
 学食の新しいシチューが美味しいらしいけどすぐに品切れになること。
 しかし、とうとう話題が途切れたタイミングでシシィは再び切り出した。 
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